パルプンテ

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弁護士ドットコムのサービスを「ハマるしかけ」のフレームワーク”フック・モデル”で分析してみた【後編】

リワード(報酬)の分析

リワード(報酬)についても引き続き弁護士ドットコム内の「みんなの法律相談」にフォーカスしていく。
 
実際にユーザーが匿名のQ&A方式(ヤフー知恵袋のような)で自分の悩みを投稿すると、複数の弁護士から回答やアドバイスが寄せられ、それらのやりとりは他のユーザーが閲覧することもできる。いちいち自分が質問を投稿しなくても、過去に自分と同じ悩みの投稿があればそれを見るだけで用が足りるという仕組みだ。
(筆者が確認した2015年6月11日時点で累計356113件の相談数が寄せられており、弁護士からの回答数の累計は表示されていないがおそらくは相談数以上の回答数があると思われる)
 
この情報量、情報の質(弁護士からの回答)、また自分と同じ立場の悩みを抱えたユーザーへの共感というリワード(報酬)は、非常に満足度の高いものだと推測される。ここでの満足度を方程式で表すと、
 

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という感じだと思う。
 
また、「フック・モデル」の観点を踏まえて筆者なりの解説をすると、この他人の投稿(Q&A)を閲覧する際にユーザー登録を要求していないという点は、このサービスの発展において非常に大きなポイントなのではないかと思う。
 
サービス運営側の気持ちを汲み取れば、これだけのユニークなコンテンツ(Q&A)を提供していて、中にはそれを見るだけでも解決する悩みもあるとすれば、「せめて個人情報くらいはもらってもいいよね」と会員登録を要求するのが普通だと思うが、ここでそれをしていない。”コンテンツをチラ見せしておいて、全て見ようとリンクをクリックすると登録ホームが登場する”というサービスはよくあるが(例えばユーザーの投稿は見せるけど弁護士からの回答は見せないとか)、筆者自身そこでサイトを離脱することはよくあるし、筆者の運営するサービスでその仕組みを導入したこともあるが、それにより登録者が増えることはなかった。
 
前述の満足度の方程式に当てはめて解説すると、もしここでユーザーに会員登録を求めた場合、その負担が「アクション(行動)での手間」に加算され、満足度のパーセンテージが下がることになる。
 
そしてなにより重要なのは、投稿に回答してくれる弁護士をこのサービスに参画させたことだと思う。
  やはり弁護士の方に登録してもらうことは大変でしたね。弁護士と
  いうのは職業上保守的に物事を考える癖がついていますから、弁護
  士法をクリアすると言う前例のないモデルで、まだ始まったばかり
  のサイトに登録するのは普通の方以上に躊躇する方が多いと思いま
  す。

  そこで我々の趣旨、サイトの安全性、さらに、弁護士法の権威の弁
  護士にも適法に運用できるという意見を得たといった法律適合性を
  説明してご理解頂き、ご登録いただくわけですが、最初の段階は少
  なからず苦労しました。しかし、それは避けて通れない道だと覚悟
  していましたので思っていましたので苦労と思わなかったですね。
 
ただ弁護士を集めるというだけではなく、業界の習慣や文化的なものが障害として作用する中でそれを取り払う働きかけをしている。
 

インベストメント(投資)の分析

リワードまででユーザーへの満足を提供し、期待を醸成した上で何をインベストメント(投資)させたのか?
 

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※サービスの本質である「弁護士に問い合わせ」という部分はありきたりなので敢えてここでは触れない。

 

内部トリガー

ここではこれまでの流れを踏まえてどのような内的トリガーが形成されるのかを分析する。
外的トリガーが視覚や音などの外的刺激であることに対して、内的トリガーはユーザーの心の中で心理的に作用するトリガー(きっかけ)だ。
 
例えば、Q&Aに自分の抱える問題や悩みを投稿したユーザーの心境を察すると、次に弁護士ドットコムから送られてくるトリガー(「あなたの投稿に弁護士からの回答がありました」的な)をまだかまだかと心待ちにしている状態だと推測される。この「心待ちにしている」という状態こそがユーザーに内的トリガーを構築した状態と言える。
 
また、もう少し大きな枠組みで見ると、Q&Aもしくは実際に弁護士への問い合わせで抱える問題を解決したユーザーが、また同じような法的なサポートが必要な状態に陥ったときには、迷うことなく弁護士ドットコムに助けを求めのではないだろうか。”法律関係で困る=弁護士ドットコムで相談”といった具合のブランディングが形成される。このブランディングも内的トリガー(法関係で困ったときの頼れる存在)であると考えられる。
 
フック・モデルにおいては、この内的トリガーがユーザーのサービス利用を習慣化さるための基礎であるとしている。