パルプンテ

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弁護士ドットコムのサービスを「ハマるしかけ」のフレームワーク”フック・モデル”で分析してみた【前編】

 

弁護士ドットコムの概要

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日本最大級の弁護士/法律ポータルサイト。58万件の相談実績。無料法律相談・弁護士ランキング・弁護士検索でお悩み解決。他にも弁護士費用の見積比較・法律Q&Aなどの豊富なサービスとコンテンツで「インターネットを通じて法律をもっと身近に、もっと便利に。
2005年に設立され、代表取締役兼CE元榮 太一郎氏(運営会社 弁護士ドットコム株式会社)が運営する、法律に関する悩みを抱えるユーザーと弁護士とをマッチングするポータルサイトだ。
2015年4月時点での同サイトへの訪問者数は800万人。また、同サイトに登録する弁護士の登録者数は8100名強となっている。
 

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ハマる仕掛けのフレームワーク「フック・モデル」とは

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「フック・モデル」とはニール・イヤールによって提唱されたフレームワークで、ユーザーにサービスを”習慣的に”利用してもらうためどのような仕掛けが必要なのか、また、それらがユーザーにとってどう作用しているのかを説明したものだ。
 
図のように「トリガー」というキッカケからはじまり、アクション(行動)、リワード(報酬)、インベストメント(投資)というプロセスがあり、これがループする。注目する点は、トリガー(きっかけ)の部分に「外的」と「内的」という二つの要素が存在する点だ。これには後ほど詳しく触れる。
AIDMAやAISASといったサービスにたどり着くまで(またはたどり着いた後の行動)のフレームワークは広く知られているが、このフレームワークはたどり着いた”サービス内でのバビトゾーンという習慣化までのプロセス”を深堀りして整理している。
 
このフレームワークを説明する上で分かりやすいのはWEBメディアやSNSといった、ユーザーに無料で価値を提供しているサービスで、いかにしてユーザーに高い頻度でサービスを利用してもらうか、また再訪の度にプロモーションコストをかけるのではなく、一度利用したユーザーにはそのサービスの力でリピートしてもらう仕掛けを創るかにフォーカスしたフレームワークだ。
Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール

Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール

  • 作者: ニール・イヤール,ライアン・フーバー,Hooked翻訳チーム,金山裕樹,高橋雄介,山田案稜,TNB編集部
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2014/05/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログ (3件) を見る
 

 では、弁護士ドットコムというサービスをフック・モデルに当てはめるとどうなるか。

 

弁護士ドットコムをフック・モデルで整理してみる

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 実際にフレームワークに当てはめて弁護士ドットコムのサイト要素を分解すると、おそらくこのように整理されると思う。では、4つのそれぞれの要素を細かく分析して、どのような仕掛けがどう機能しているのか、またその仕組をつくるために何を頑張ってきたのか(これはあくまで筆者の仮説ですが)を分析していく。

 

トリガー(きっかけ)の分析

まずはトリガーにあたる部分。ここで先ほど触れた「外的(トリガー)」について説明すると、例えば定期的に送られてくるメール、スマホの画面上に表示されるプッシュ通知、サイトのリンクもこれにあたる。
視覚や聴覚等を使ったアラート的なものがこれにあたる。新規ユーザーを獲得する上で、検索エンジンSNSに広告を出稿することも外的トリガーを作り出していると言える。
 
弁護士ドットコムがどのようにしてユーザーに「きっかけ」を与えていたんか?実際にツールを使って弁護士ドットコムの集客経路を見てみると、検索エンジン(Search)経由がダントツ。

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これはユーザーの心理や弁護士のサポートを必要とするシーンを理解した上で、最適な集客経路を作り出していると言える。
 
一般的に、弁護士に相談したいような内容はあまり人に言えた内容ではないことが多い。また弁護士といえば相談料だけでも1時間あたり数千円〜1万円程度と気軽に相談できる相手ではない。どうしようと悩みながらも、周囲の人にはなかなか相談できないでいるユーザーがどんな行動をとるか想像すると、まずは検索エンジンで同じような問題の事例がないか?解決方法のヒントがないか?弁護士に依頼した場合の費用はどれくらいなのか?といった情報収集をすることは容易に想像できる。
 
こうしたユーザーが検索エンジンを利用した際、それにあったコンテンツを大量に用意することで、弁護士ドットコムのサイトに多くのユーザーが流れ込むことになる。
 
弁護士ドットコムでは初期にこの部分で相当な努力をしている。

team-work.jp

なんと月間で100本もの法律絡みの記事を毎月リリースしていたようだ。しかも適当な記事では真剣に悩んでいるユーザーにとっての価値はないので、編集部を置き、編集長の配置や独自の記事生産体制を構築することで質と量の両面で価値創造を実現している。
これにより、検索エンジンを通して「リンク」という外的トリガーをきっかけに多くのユーザーとの接点を創出してきた。
 

アクション(行動)の分析

ではサイトに流入したユーザーに、どのようにアクションをおこさせるのか?
簡単に説明すると以下の2点が重要になる。
 
・ユーザーのモチベーション
・分かりやすさ(ユーザーの持つ能力で実行可能か否か)
 
ここで注目したいのが、「みんなの法律相談」というコンテンツだ。「問題を解決したい」「不安を払拭したい」という高いモチベーションをもつユーザーに、非常にわかりやすく見やすいインターフェースで、弁護士ドットコムにしかない情報を提供しているため、ユーザーはサイト内でのアクションが起こしやすい環境となっている。
 
情報検索はキーワード入力によるサイト内検索で、自分のニーズにあったものが探せるようになっている。カテゴリ検索は、「役に立った相談」「注目の相談」「最新の相談」の3つだけだ。これは筆者の個人的意見だが、あえて細かくカテゴリ検索を用意して何度もクリックをさせるよりも、はるかに探しやすいインターフェースだと思う。

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そして、Q&Aの一覧画面においても、質問のタイトル、カテゴリ、出だしの文章といった、コンテンツの内容が予測できるような見せ方に加えて、「役に立った」数と「質問者が納得」というアイコンを表示して記事を選びやすくする工夫をしている。
 
ヤフー知恵袋と比較してもデザインは近しい。これはインターフェースのデザインにおいて重要なことで、すでに一般化している仕組みや要素を取り入れる場合は、あまり独自性を追求せずに「常識(一般的)」に従順に従う方がユーザーにとっては使い易い。一般認知に合わせたインターフェースにすることで、ユーザーが改めて使い方を学び直す「手間」を省くことができてストレスを感じずに済む。前述した「分かりやすさ」においても秀逸だと思われる。
 
 
後編に続く